第1回カリキュラム対談 嘉悦大学×九州国際大学法学部(前編)

 第1回目の対談では、嘉悦大学から田尻慎太郎先生、九州国際大学法学部から山本啓一先生をお呼びしました。

 嘉悦大学では、旧カリキュラムの中で学生が脱落してしまうという状況の中で、自由な学びの環境を提供する方向に改革が進められました。しかし、ただ自由化するだけでは満足な学びが得られないまま学生が卒業してしまう恐れがあるため、1年次の基礎ゼミにおいて様々な工夫を施されています。

 九州国際大学法学部では、勉強が得意でない学生と、旧来の考え方に縛られる教員のミスマッチが起きていました。かつ、公務員受験や資格取得自体が目的になってしまい、就職活動をしない学生がいたのも法学部ならではの課題でした。そのような状況の中で、大学の授業とキャリアと深く結びつけて、学生が意義を感じながら授業をまっとうできるよう工夫をされています。

 ※各校の取組みの詳細はレポートでご紹介しております

 両校とも偏差値としては学生層が似通っているといえます。しかし、嘉悦大学はかなり自由度の高いカリキュラムとなっていますが、九州国際大学法学部は自由さに頼らないカリキュラム導入に向けて改革を進められています。
 この対談では近しい学生を受け入れながら、全く違うカリキュラムを採用している2校に、学生やカリキュラムに対する考えについてお話して頂きます。

――それでは早速、各校の学生の特徴からお話頂けますか?

田尻:嘉悦大学は東京にありながら、地方の私大と近い環境にあると言えます。以前の入試の面接では「近いから」「経営経済学部で、経営と経済を両方学べるから」というのがよくある志望理由でした。でもそれは理由にもなっていないんですよね。
 最近は、オープンキャンパスで雰囲気がよかったとか、模擬店やSA(スチューデント・アシスタント)を頑張りたいとか、経営者になりたいとか、しっかり志望理由を言えるように変わってきました。

山本:受験者数は増えましたか?

田尻:いえ、それほど変わってはいません。なので、外から見ると「入学志願者が増えていないじゃないか」と言われてしまうんですが(笑)ただ、学生の質ははっきりと変わりましたね。

山本:九州国際大学(以下KIU)も学生層はほぼ同じです。6割が推薦やAO入試で、福岡、とくに北九州の学生が多いですね。
 2008年から警察官育成を全面的に打ち出し、地元の高校にもそのように広報しました。すると、警察官になりたい、とはっきり意思をもって来る学生が増えましたね。
 しかし受験生の層が変化したかというとそこは疑問で、やはり学力不足という課題はあります。しかも、高校時代に模試を受けたことがない学生が多いため、自己相場観がつかめてない。普通に勉強していれば警察官になれるだろうと思い込んでいるんです。実際には、人の3〜4倍やらなければならないんですが。


田尻慎太郎氏:嘉悦大学経営経済学部専任講師。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。シンクタンク研究員、会計検査院調査職を経て米国留学後、2005 年より現職。 情報メディアセンター副センター長として学内システムをコストをかけずに一新。2008 年に加藤寛前学長が着任後は教務センター長及びキャンパス整備担当としてカリキュラム改革、アクティブラーニング教室の導入、大学院・新学部開設など矢継ぎ早の「カトカン改革」を支える。
田尻:嘉悦では企業に就職したい、というのがコア層ですね。あとは家業を継ぐとか,昔から嘉悦はそのような学生が一定程度いました。最近出てきたのは、NPOで働きたいという学生ですね。初年次教育でNPOと一緒に授業をやっている影響でしょう。
 大学周辺から通う学生は「自分も大学に行ってホワイトカラーになるんだ」というのは漠然と想定しているようです。逆に他の地域から来る学生は、地元の友人が高卒で働く姿を見ているので、「自分は大学に行ってホワイトカラーとして働きたい」というはっきりした意識がある。偏差値にかかわらず、大学に入ってくる学生はそういう考えを持っているという部分では変わらないのではないでしょうか。

山本:大学である以上、どのようなレベルの学生を受け入れたとしても、卒業するまでに大卒人材として育成しなければなりませんね。大卒人材とは、ある程度の規模の組織で働く場合、ジェネラリストであることが相変わらず要求されています。ということは、読み書きそろばんといういわば汎用的なリテラシーと、部署を移動したときにすぐに新しい知識を学べるかという学習能力が必要になります。

田尻:嘉悦では1年次前期の時間割があらかじめ決められているのですが、KIUでも似た取組みが行われていると聞きました。

山本:はい、必修科目ではないけれども時間割には初めから入れてしまう科目があります。クラス指定科目と呼んでいますが。

田尻:あ、うちもそう呼んでいます。

山本:同じですね(笑)一つの科目を2〜4クラスに割って、ひとつの科目を複数の教員が担当する少人数制にしています。

田尻:学生の反応、変化はいかがですか。

山本:かつては学生が自分で時間割を作成するという作業だけで、1泊2日の宿泊研修が終わってしまうほどでした。自由履修の範囲が狭まった現在は、時間割作成にかかる時間は激減しています。また、後で詳しく触れますが、クラス制にすることで我々としても学生管理をしやすくなりました。
 一方で、自分で時間割を作るという作業は、何をいつどうやって学ぶのかという主体的な学びを少なからず意識させる効果がありますから、その機会が減ってしまう側面はあります。なので、必修科目を増やすならば、嘉悦大学のような学生生活の計画や将来計画を立てるというようなことも同時並行でやる必要があると考えます。
 ちなみに1学期分の授業のうち24単位中18単位くらいが指定されており、残り3科目くらいを自分で選ぶという形です。

田尻:うちと同じですね。必修化した結果、固定したクラスというものはあるんですか?