第2回カリキュラム対談 国際基督教大学×立教大学経営学部(前編)

 第2回目の対談では、国際基督教大学から西尾隆先生、立教大学経営学部から日向野幹也先生をお呼びしました。

 国際基督教大学では、学びたいという学生のやる気を活かすために、より自由な学びの環境を提供するべくメジャー制を導入しました。しかし、ただ自由化するだけでは学生が適切な分野、勉強方法、進路を決定できるとは限らないため、アドヴァイザー制などの工夫を施されています。

 立教大学経営学部では、従来の大学で行われてきた教育方法では学生がモチベーションを保てない状況を鑑み、ビジネス・リーダーシップ・プログラムを開発しました。学生をプロジェクトに取組ませることで学ぶことの意義を実感させ、経営学を学ぶためのモチベーションを維持できるよう工夫されています。

 ※各校の取組みの詳細はレポートでご紹介しております

 第1回目と同様、両校とも偏差値としては学生層が似通っているといえます。しかし実際には、国際基督教大学は学生の自主性と自由さを重視する一方で、立教大学経営学部では整備された道のりを学生が進んでいくようにプログラムが組まれています。
 今回の対談でも、近しい学生を受け入れながらも異なるカリキュラムを採用している2校に、学生やカリキュラムに対する考えについてお話して頂きます。

――それでは早速、各校の学生の特徴からお話頂けますか?

日向野:立教大学の学生について、見て気づくこととしては、都会の私大ということで社交的な学生が多いということですね。それから、人に愛されることに慣れてるような学生が多いです。反面、ブランドに弱いみたいなところもあって、反骨精神というのとはだいぶ違う方向です。

西尾:国際基督教大学(以下、ICU)は、今も昔も「国際」という大学の名前に惹かれてくる学生が多いですね。入学時ですでに国際的、これは帰国生を含め、海外の経験が豊かだという学生がいる一方で、国際的なものに憧れてくる地方からの学生も多いです。

日向野:将来の目標としては、資格を目指す学生は少数派ですね。研究者になりたいというのもまた少数派で、圧倒的多数が企業への就職を考えています。立教の伝統的な学生というのは良くも悪くもブランドに弱く順応的なので、起業する人は少ないんですよね。ただ最近は、自分で起業しようという学生が経営学部のなかに出てきています。

西尾:ICUも出口を見ると企業に行く学生が多いです。ただ、他と比べると研究系・専門職系を含め大学院進学率が2割程度とかなり高い。理系のメジャーがいくつもある、ということもあるでしょう。しかしマジョリティは企業に行きますし、資格系は少なく、公務員も多くはありません。
 ただ、私たちは企業で役に立つ人間を育成するという意識は希薄ですね。すぐには役に立たないけども判断に必要な思考の基礎をつくるということを強調しています。プラクティカルなことを教えることに対して、否定的であるわけではないのですが、それよりも優先して思考の基礎のようなもの、例えば古典を読むことなどを重視しています。
 ただし、どんな職業についても重要なことを教えようと思っていますから、矛盾しているとは思いません。

日向野:ICUが教養を大事にしているのとは逆に、経営学部はイコール実用的と思われがちです。しかし実用的スキルであるリーダーシップは全分野において必要で、経営学部に限ったことではないんですよね。持ち運びできるスキルの典型的なものです。理学部でも文学部でも人と仕事する限りではこのスキルは必要だと思っています。
 中途半端なリーダーシップだけだと「調子のいいやつ」で終わるんですが、そうではなく、専門知識や教養という後輪があって、そしてリーダーシップという前輪があって、はじめて他人を巻き込んでいけるようになる、という考えに基づいています。


西尾隆氏:国際基督教大学教養学部長。国際基督教大学大学院 行政学研究科長、サービス・ラーニング・センター長を経て、2009 年 4 月より現職。
西尾:すると、リーダーシップというものは授業の中でだけ鍛えるというよりも、大学生活そのものが関係しますよね。大学生活のデザインはどのようにお考えですか?

日向野:放っておけば学生はこうなるだろう、というのを想定して、それを防ぐ仕組みを考えています。
 伝統的な都会の大規模私立大学というものは、大教室の授業だから入学した時から友達をつくる機会がない。友達が欲しければサークルに入る。サークルに入ってはまってしまうと授業に出なくなる、そういう悪循環でした。
 それはいけないことだと思ったので、1年生のときから少人数授業を経験させるようにしたんです。そうすると、大教室の授業でも友達がいるので行きやすいということになるわけです。また、サークルに行かなくても友達がいるので、授業の優先順位を下げてまでサークルに行く必要もなくなる。
 1年生から始まる少人数授業と、さらにゼミとで複数の教員が同じ学生をよく知っている状態になりますから、その点でも学生たちの学部へのコミットメントが高まるようになっています。

西尾:それは良い取組みですね。大学生活という点では、ICUは6学科制だった2008年までは、学科ごとに大学生活の設計があったといえます。特に個性が強いのは理学科で、実験室に朝9時から夜10時近くまでいるという日もあったようです。学科を改変してメジャー制にして以来、そうした生活の設計は無数の個別デザインになりました。
 学生自身と教員とアカデミックプランニング・センターでサポートしながら、それぞれの学びをオーダーメイドする。例えば31種あるメジャーを「シングルメジャー」「ダブルメジャー」「メジャー・マイナー」でそれぞれ組み合わせると、およそ1500通りになるんですよ。これにはものすごい多様性がある。もちろん、1学年約600人に対してオーダーメイドでやるということには困難があるし、模索し改善すべき部分も多々あります。まあ、教育というのは永遠の試行錯誤の過程なんですけどね。

日向野:そうですね。ところで、メジャーは何割くらいの学生があらかじめ決めて入ってくるものなんですか?