高校教員の皆様へのメッセージ

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「教育力」で変わる、大学・専門学校の選び方


■大学・専門学校で変わる「先生」


現在の日本では、およそ8人に1人の学生が大学・専門学校を中退し、年間の中退者は11万人に達しています。彼らはなぜ辞めるのか――その理由は、次の2つに集約されます。

ひとつは「学習意欲の喪失」です。調査では中退経験者のおよそ6割がこれに該当しています。背景には様々な要因がありましたが、大きく分ければ(1)学生と教育方法のミスマッチ、(2)学生と教育内容のミスマッチ、(3)学生支援の不足、の3つが挙げられます。

そしてもうひとつは「人間関係」です。人間関係を理由にした中退には、教員や友人・先輩との間で何らかのトラブルが生じて中退するパターンと、周囲と人間関係を築けず孤立して中退するパターンの2通りがありますが、多くの場合が後者の「孤立」によるものでした。

ちなみに、中退は経済的事情によるものが多いと思われがちですが、実際に「経済的事情」を理由に挙げた中退者は、全体の1割にも達しませんでした。また「精神的疾患や身体的疾患」も、中退者全体の1割未満に留まっています。

それでは、なぜ学生たちが「学習意欲喪失」や「人間関係」に悩みを抱えるようになるかといえば、その答えは多岐にわたりますが、最大の原因は大学や専門学校の教育力不足です。

高校までは、皆さんのような教える資格を持った「教師」が「先生」として教壇に立ちます。教師の方々は、少なくとも大学で教育学のみならず心理学や実践的な教授法も学び、数週間の教育実習を経験してきています。また、校内外で授業研究をされている方も少なくないでしょう。

しかし、それが大学や専門学校になると、「先生」の意味が一変します。大学や専門学校の先生になるにあたっては、受けなければならない試験はありません。大学では先生といえば「学者」やいわゆる「研究者」ですし、専門学校では「その道のプロ」が先生です。

そのため、先生に求められるのは「専門知識」であって、教育哲学や教授法、カウンセリング・コーチングスキルなどを含めた「教育力」はあまり重視されません。高校以前の「先生」と大学や専門学校の「先生」では、この「教育力」の点で大きな違いがあります。皆さんの教え子が上級学校でこれから出会う「先生」とは、ほとんどの場合「プロフェッショナルとしての教師」ではないのです。

そのため、極論を言えば、教育のプロではない先生方が行う授業は、授業として機能しない可能性が考えられます。たとえば、大学では、100名以上の学生を相手に教育のプロではない教授が教鞭をふるいます。教育のプロである高校の先生方が、30~40名の生徒を相手に四苦八苦するにも関わらず、どうして大学の先生が100名以上の学生を相手に、より難度の高い内容を教育できるでしょうか。

もちろん、大学生や専門学校生ともなれば、自己管理や自律的学習をすべきであって、先生が手取り足取り教える訳にはいかないという考えもあります。これは全く間違いではありません。しかし、大学や専門学校への進学が「当たり前」になった近年では、大学生や専門学校生になるという自覚や覚悟がしきれないまま新しい環境に身を投じて、結果的に「“努力”の前に中退してしまう」という若者が増えています。このような若者観は、きっと高校現場のみなさんがいちばんご存じでしょう。

しかし悲しいことに、学生の質が変わっても、大学や専門学校の教育の質は、そう簡単には変わりません。そのため、いま多くの大学や専門学校の現場では「教育が必要な学生」と「教育力より研究・専門性を重視してきた大学・専門学校」という「すれ違い」が生じ、大学生・専門学校生の「中退」がひとつの社会問題に発展しているのです。

このようなすれ違いが生じている状況にも関わらず、中退者が多い大学・専門学校はこれを理解していません。そして大学・専門学校が問題に対応できなかった結果が、次の中退者となって表れます。

偏差値では同レベルの大学・専門学校でも、中退率でみると、年間9%から1%まで「幅」があります。この「中退率の差」が示していることは、まさにその大学・専門学校の「教育力」と、組織としての「課題解決能力」なのです。


■高校生に勧めたくなる大学・専門学校


高校の先生方は、進路指導担当や3年生の担任になれば進路相談に乗ると思います。その際はぜひ「偏差値」ではなく「教育力」で大学・専門学校の良し悪しを見極めていただきたいと思います。そして、「教育力」を正しく評価するために必ず入手していただきたいデータが6つあります。

それは、各大学・専門学校の(1)中退率、(2)就職率(卒業生を母数に)、(3)派遣・契約社員を除いた前年度の就職先一覧、(4)教員対学生比、(5)定員充足率、(6)自校からの過去5年間の進学者一覧と現在の状況です。

また、大学・専門学校全体のデータよりも、学部・学科・コース・男女・入試形態別のデータを入手することが重要です。特に大学は、一般的に学部自治が強い組織ですので、学部ごとに「教育力」や組織としての「課題解決能力」に違いがあります。

大学・専門学校の「中退率」には総合的な学生満足度が、また「就職率」と「就職先」には入学から卒業までに学生がどれだけ成長できたかがはっきり表れます。そのため、(1)中退と(2)就職率と(3)就職先の三つを兼ね合わせれば、その大学・専門学校の実力を多角的に評価でき、(4)(5)はその裏付けとなるでしょう。

また、見落としがちですが極めて重要なのが、(6)卒業生の進路状況です。卒業生の状況によって、ご自身の学校と進学先との相性を判断することができます。たとえば、もし卒業生たちが活躍しているようなら、その進学先との相性はよいと考えられますが、逆に中退していたり休みがちになったりしていれば、その大学・専門学校への進学はできるだけ避けたほうがよいかもしれません。

以上のデータは、一部ホームページなどで一般に公開している大学・専門学校もありますが、公開方法はばらばらですし、古いデータを載せていることも考えられます。そのため、少々手間ではありますが、直接電話で大学・専門学校に問い合わせていただくのが確実かと思います。電話であれば、相手の対応によっても、大学・専門学校の雰囲気を感じ取ることもできるでしょう。また、大学の(1)(2)(4)(5)のデータについては、読売新聞が毎年行っている『大学の実力』調査でも確認できます。状況に応じて、あわせてご利用いただければ幸いです。

最終的に進学先を決定するのは、生徒本人の責任ですし、入学後の生活も本人の努力次第でどうにでも転ぶかもしれません。しかし、皆さんの教え子が出来るだけ幸せな学生生活を送れるように、大学・専門学校選びの「手伝い」をするのが進路指導の意味だと思います。ぜひ、生徒本人が見落としがちな「客観的データ」を提供して、本人の選択をより確実なものにしてあげていただければ幸いです。


■情報提供


『中退白書2010』
拙著『中退白書2010』には、いまの高等教育機関からの中退の実態が詳しく載っています。中退に関心がおありの方は、ぜひご一読いただきたいと思います。

中退経験者インタビューレポート
中退経験者101名へのインタビューの記録です。中退経験者の語りから、いまの学生の様子を知っていただけます。

『大学の実力』
読売新聞が実施している「大学の実力」調査では、中退率や就職率など、他の大学情報誌では知れない情報が詰まっています。また年々調査協力大学を増やし、2011年度版には623校が回答しています。大学選びや進路指導にお役立て下さい。

進学予定の高校生のご両親へのメッセージ

進学予定の高校生のご両親へのメッセージ

わが子の大学・専門学校選びに「ひとこと」


●せっかく入学しても、8人に1人が中退


現在の日本では、およそ8人に1人の学生が大学・専門学校を中退します。年間の総中退者数は、じつに11万人以上です。一体なぜ、彼らはせっかく入った大学・専門学校をやめてしまうのでしょうか?

当研究所の独自のインタビュー調査から、2つの理由が浮き上がってきました。ひとつは「学習意欲の喪失」、つまり「もう勉強したくない」と思ってしまうということです。私たちの調査では、中退経験者101名のうち、およそ6割がこれに該当していました。具体的には、「授業がつまらない」「やりたいことができなかった」「苦手科目についていけなかった」などの意見が出されていました。

そしてもうひとつは、「人間関係」です。人間関係を理由にした中退には、教員や友人・先輩との間で何らかのトラブルが生じて中退するパターンと、周囲と人間関係を築けず孤立して中退するパターンの2通りがありますが、多くの中退が後者の「孤立」によるものでした。

このように中退理由は、そんなに大きなことではありません。そのため、もしかしたら中退者のことを「もともと不良だったんじゃないかしら?」とか「もともと問題がある子なのでは?」と思われたかもしれません。でも、意外とそうでもないのです。

私たちがインタビューさせてもらった101名の中退者の方々は、じつに「ふつう」の若者たちでした。実際に、高校までの学業や部活動も周囲と変わらず行っていましたし、また進学後も、アルバイトなどでは自分の役割をしっかり担って、周囲と楽しく過ごしていました。ここに大学・専門学校中退の根深さがあります。

現在の大学・専門学校は入試が簡単になったため、同じ大学・専門学校でも学生の学力レベルのばらつきが大きくなっています。そのため従来大学・専門学校レベルとされていた授業についていけない学生が出ることは、容易に想像ができるでしょう。

さらに、若い世代全体に言えることですが、いまの学生は身近な人間関係やコミュニケーションに対してとても敏感になっています。ちょっとした雰囲気の合わなさや孤独感も敏感に分かってしまうので、人間関係の問題によるストレスはほかの世代以上だと思います。

そして問題は、このような学生の変化に対して、多くの大学・専門学校は対応しきれていないということです。学生の変化に気づいてはいるが、改革に踏み出せず、入学してくる学生にマッチした教育を行っていない大学・専門学校が多々見受けられます。

その結果、割を食うのはそれぞれの大学・専門学校の「ターゲット」から外れた学生たちです。彼らは入学許可を受けたにもかかわらず、いざ入学してみると、学業面や生活面で「落ちこぼれる」ような形になってしまいます。

もちろん、本人が決めることですから、中退した学生自身にも、その中退に関する責任はあります。彼らの努力や心持ちによっては、中退せずに済んだかもしれません。さらに言えば、高校までの学校・地域での教育にも少なからず責任があるかもしれません。

しかし、偏差値では同レベルの大学・専門学校でも、中退率をみると、年間10%のところもあれば1%のところもあるのが事実です。内情を調べても、教員、カリキュラム、サポート体制、どれを取っても中退率の低い大学・専門学校のほうが、多くの場合優れています。また、実際にキャンパスを訪問してみると、学内の活発さに明らかな違いがあります。学生が多く中退することの背景には、それなりの事情があるということです。


●わが子の大学・専門学校選び――「親」としてできること


大学・専門学校の中退は、決して他人事ではありません。どの中退者の親御さんも「まさかうちの子が」と思われていました。大学・専門学校の選び方によっては、あなたのお子さんも、中退する可能性がないとは言えないのです。 
 
しかし、中退を未然に防ぐ方法はあります。その第一歩が、大学・専門学校選びです。ここでは「中退しない大学・専門学校選び」のコツをご紹介します。

ただし、その前に、保護者のみなさんにお伝えしたいことがあります。

先の話と矛盾するようですが、実際には、どれだけ教育力を誇る大学・専門学校でも、中退する学生はいます。それは本人の周囲の勧めで「なんとなく」進学先を決めてしまった場合です。「なんとなく」で進学先を決めてしまうと、少しの困難で辞めてしまいがちです。もともと進学先の大学・専門学校への愛着や憧れがなかったり、目的も目標も持てなかったりするせいだと思いますが、これは大変もったいないことです。「ミスマッチな大学・専門学校に入学しないこと」も大切ですが、それと同じくらい大切なのが「子ども自身が大学・専門学校を選ぶこと」です。

そのため、大学・専門学校選びでは、親が干渉しすぎてはいけません。お子さんももうすぐ大人になるのですから、自分のことは自分で責任を持って、決められるはずです。親として子どもにしてあげられることといえば、「ちょっとの助言」と「たっぷりの愛情」くらいでしょう。不安定な世の中ですからいろいろとご心配ごとがあると思います。それでも、子ども自身が「選ぶ」という権利と責任を持っていることを忘れないでいただきたいと思います。

それでは最後に「中退しない大学・専門学校選び」のコツとして、みなさんができること、またはお子さんに対して助言していただきたいことを、以下に3つご紹介します。

(1)「教育力」で選ぶ
大学・専門学校を選ぶにあたって正しい判断をしていただくためには、偏差値ではなく、大学・専門学校の「教育力」を見極めなくてはなりません。そして、そのために大学・専門学校から提供を受けてほしいデータがあります。それは(1)中退率、(2)就職率(卒業生を母数に)、(3)派遣・契約社員を除いた前年度の就職先一覧の3つです。

また、大学・専門学校全体のデータよりも、学部・学科・コース・男女・入試形態別のデータを入手することが重要です。特に大学は、一般的に学部自治が強い組織ですので、学部ごとに「教育力」やチームとしての「課題解決能力」にかなり違いがあります。

大学・学校の就職率と就職先には、入学から卒業までにどれだけ成長できたかがはっきり表れます。そのため、(1)中退と(2)就職率と(3)就職先の3つを兼ね合わせれば、その大学・専門学校の実力を多角的に評価できます。 

これらのデータは、ホームページなどで一般に公開している大学・専門学校もありますが、公開方法はばらばらですし、古いデータを載せていることも考えられます。そのため、少々手間ではありますが、直接電話で大学・専門学校に問い合わせていただきたいと思います。その際に、相手が快く教えてくれるかどうかによっても、学生に真摯に向き合ってくれる学校か否かを垣間見ることができるでしょう。

また、大学の(1)(2)のデータについては、読売新聞が毎年行っている『大学の実力』調査でも確認できますので、あわせて利用していただければ幸いです。

(2)学部学科/コースまで選ぶ
実際大学・専門学校に入ってから学ぶ内容は、学部学科/コースによって全く異なります。そのため大学・専門学校だけではなく、学部学科/コースではどんな先生がどんなことを教えているのかということまで、よく吟味していただきたいと思います。ご自身のお子さんにとって、どの大学・専門学校の、どの学部学科/コースに入れば、充実した2~4年間を過ごせるでしょうか?

(3)「平日のキャンパス」を訪問
最後に、その大学・専門学校の「雰囲気」が合うかどうかを見きわめるために、子ども自身が「平日のキャンパス」を訪れて、大学・専門学校と“素顔”で会う必要があります。とくに(1)学食、(2)掲示板、(3)夕方以降のキャンパスを見るのがポイントです。学生の活動が活発な大学・専門学校では、友人同士の楽しい食事以外にも、学食での部活ミーティングやグループワークの風景が見られます。また掲示板にもさまざまな団体のチラシが貼ってあるのも好評価できます。しかし、もし夕方以降のキャンパスが閑散としていたら要注意です。その大学・専門学校には学生たちの「居場所」がないのかもしれません。


■情報提供


『中退白書2010』
この本には、いまの高等教育機関からの中退の実態が詳しく載っています。中退に関心がおありの方は、ぜひご一読いただきたいと思います。

中退経験者インタビューレポート
中退経験者101名へのインタビューの記録です。中退経験者の語りから、いまの学生の様子を知っていただけます。

『大学の実力』
読売新聞が実施している「大学の実力」調査では、中退率や就職率など、他の大学情報誌では知れない情報が詰まっています。また年々調査協力大学を増やし、2012年版には623校が回答しています。大学選びや進路指導にお役立て下さい。

大学・専門学校に進学する高校生へのメッセージ

大学・専門学校に進学する高校生へのメッセージ

8人に1人が中退!?中退しない大学・専門学校選びのコツ


●8人に1人が大学・専門学校を中退!?


高校生のみなさん、卒業後の進路はもう決まりましたか?それともまだ、どの大学を第一志望にしようか悩んでいる最中でしょうか?

日本には大学が770校以上、専門学校は3000校以上もありますが、そのなかからみなさんが通えるのは1校だけです。また大学や専門学校は、2~4年間という長期間と最低でも400万円の学費をかける「大きな買い物」ですし、大げさなことを言えば「一生を左右する重要な選択」ですから、志望校を選び出すのはなかなか大変な作業でしょう。

みなさんの先輩たちも、そうして悩みながらも、自分の一校を選んでいきました。しかし、非常に残念ながら、なかにはあまりいい選択をできなかったケースもあるようです。その証拠に、大学生・専門学校生のうち、なんと8人に1人が中退しています。なかには自分のキャリアを真剣に考えた結果、起業をするという積極的な中退を選ぶ学生もいますが、そうではない理由で中退をしてしまう学生が多いのです。

一体なぜ、そういった学生は大学・専門学校を中退してしまうのでしょうか?その理由は、大きく分けて2つあると考えられています。

ひとつは「学習意欲の喪失」、つまり勉強をしたくなくなったということです。調査では中退経験者のおよそ6割がこれに該当していて、その原因としては、(1)授業がつまらない、(2)「自分の学力」と「授業で求められる学力」が合わない(授業が難しくてついていけない/簡単すぎてつまらない)、(3)「やりたいこと/好きなこと」とカリキュラム内容が合わない、ということのいずれかが考えられます。

もうひとつは、「人間関係」です。人間関係を理由にした中退には、教員や友人・先輩との間で何らかのトラブルが生じて中退するパターンと、周囲と人間関係を築けず孤立して中退するパターンの2通りがありますが、多くの場合が後者の「孤立」によるものでした。

もちろん、思い悩んで中退する学生よりも、悩みを解決したりうまくやり過ごす学生のほうが多いですし、学業や部活・サークル、アルバイト、その他の課外活動など、忙しいながらに充実した日々を過ごす学生がほとんどです。しかし、入学当初などは、ほとんどの学生が、クラスがない・大人数授業・授業選択制・部活・サークル活動・アルバイトなどの「新しい環境」に戸惑いを感じたり、課題の多さに苦労したりします。程度の差はありますが、どんな学生も、学業面や生活面で悩みを抱えることには違いがありません。

それでも「中退する学生」と「中退しない学生」がいるのも事実です。彼らの明暗を分けるポイントは次の2点――「努力」と「大学・専門学校の選び方」だと考えられます。

(1)学生生活を楽しむ「努力」
まず、これは高校生活でも共通して言えることだと思いますが、どんな悩みも、あなた自身が解決するために「努力」をしなければ、状況は悪化していきます。たとえば、「授業がつまらない」「周囲に心を開けない」という小さな悩みも、放置しているとだんだんストレスになって、「こんな嫌な思いをするために時間もお金も使いたくない、辞めたい」と思うようになり、最後には中退してしまうかもしれません。でも、授業内で知り合いをつくるとか、毎回先生に質問してみるとか、「学生生活を楽しむ努力」があれば、少しずつ悩みは薄くなって「中退したい」とまで思い悩む人はほとんどいなくなるでしょう。

(2)大学・専門学校の選び方
しかし、残念ながら、あなたがどれだけ努力をしても、悩みが解決されない場合があります。それは、そもそも入学する「大学・専門学校の選び方」に問題があったときです。

まず、1番多い大学・専門学校選びの失敗例は、「教育力不足」の大学・専門学校を選んでしまうことです。

「教育力」がある大学・専門学校では、先生たちの指導力と授業内容(カリキュラム)によって、さまざまな問題の発生を予防しながら、学生を「成長」に集中させます。そのため、もともと悩みが少なく、悩みの質も軽く、教職員のサポートによって悩みが深刻に発展することも多くありません。

しかし、「教育力」が不足している場合、この状況はすべて逆になります。教員に教える気がない、授業内容がつまらなすぎる、学生の悩みに関心がないなど、大学・専門学校自体に学生の「悩みのタネ」が多すぎます。悩みの解決をサポートしてくれる人も見当たりません。そんな状況では、努力もむなしく、悩みが悪化し、大学・専門学校に通う意味を見いだせず、学生たちがちょっとしたきっかけで辞めたくなってしまうことは目に見えています。教育力が不足している大学・専門学校を選んでしまったら、その時点で「中退の確率」が高くなると言っても過言ではないでしょう。

また、2番目に多い大学・専門学校選びの失敗例は、あなたのやりたいことや価値観と合わない大学・専門学校を選んでしまうケースです。たとえば、文学を学びたいのに社会科学の強い大学・学部に入学してしまったとか、大人しい性格なのに派手な人が多い専門学校を選んでしまったとなれば、そこで楽しく充実した学生生活を送るのはかなり難しいでしょう。大学・専門学校選びにおいて、世間的な評判(ブランド)はあまり参考になりません。

教育力の高い大学・専門学校でも同じことが言えます。どのような教育に合うかは、一人ひとり違います。あなたの性格や得意・不得意、価値観に合うような大学・専門学校は、あなた自身が自分の責任で選ばなければいけません。


●自分に合った大学・専門学校選びのコツ――高校生がすべき2つのこと


以上のように、大学・専門学校選びは皆さんの人生にとって、とても重要なものになるでしょう。プレッシャーに感じてしまうかもしれませんが、考え方を変えれば、この選択によってあなたの人生を一層明るく楽しいものにできるということでもあるのです。

「自分が行けるレベルなんてどうせ」とか「大学はどこも同じに見える」とか、投げやりなことを言うのはもう止めにしましょう。当研究所が、皆さんのために、責任をもって「中退しない大学・専門学校選び」の「コツ」を伝授します。中退しない大学・専門学校選びの鉄則は、偏差値やランキング順位ではなく、まず教育力をはじめとする大学・専門学校の「本当の姿」を見ることです。具体的には、以下の2つです。

(1)まず 「教育力」を測る!
「教育力」は、データとしては(1)中退率、(2)就職率(卒業生を母数に)、(3)派遣・契約社員を除いた前年度の就職先一覧、の3項目から判断できます。

偏差値では同レベルの大学・専門学校も、中退率では大きく差があることがあります。偏差値が少し高いが5人に1人が中退する大学と、偏差値はやや低いが20人に1人しか中退しない大学――あなたはどちらに入りたいと思うでしょうか。中退率には、偏差値には表れない大学・専門学校の「教育力」や様々な内情が表れます。ぜひ第一の基準にしてください。

また、「就職率」と「就職先」には、入学から卒業までに学生がどれだけ成長できるのかがはっきり表れます。偏差値はそう高くないのに就職率や就職先のレベルが高いということは、その大学・専門学校が相当「いい教育」をしている証明です。そのため、(1)中退と(2)就職率と(3)就職先の3つを合わせれば、その大学・専門学校の実力を多角的に評価でき、より成長しやすい環境を選択することができるでしょう。

これらのデータは、ホームページなどで一般に公開している大学・専門学校もありますが、公開方法はばらばらですし、古いデータを載せていることも考えられます。そのため、少々手間ではありますが、直接電話で大学・専門学校に問い合わせていただきたいと思います。その際、相手が快く教えてくれるかどうかによって、学生や受験生に真摯な態度を持っている学校かどうかを垣間見ることができる、という副次的メリットもあるのでオススメです。

また、読売新聞が毎年行っている『大学の実力』調査では、各大学の中退率と就職率のデータが確認できますので、適宜活用して、効率的な「教育力」調査に役立ててください。


(2)自分に合っているかを知る!
次に、「教育力」があると分かった大学・専門学校のなかから、さらに自分の「やりたいこと」ができそうか、自分の価値観にあっているかなどを確かめなくてはなりません。方法は2つあります。

第一に、「平日」にキャンパスを訪れて、オープンキャンパスでは見られない「素顔」の大学・専門学校が見ること。これが、最も有効な手段です。特に「雰囲気」を知るために、(1)学食、(2)掲示板、(3)夕方以降のキャンパスをよく観察してきて下さい。

学生の活動が活発な大学・専門学校なら、友人同士の楽しい食事以外にも、学食での部活ミーティングやグループワークの風景が見られます。また掲示板にもさまざまな団体のチラシが貼ってあることでしょう。逆に、もし夕方以降のキャンパスが閑散としていたら要注意です。その大学・専門学校には学生たちの「居場所」がないのかもしれません。

また第二に、平日訪問だけでは足りなかったというときや、どうしても平日は都合がつかないというときにおススメなのが、気になる大学・専門学校の学生をtwitterやmixiやfacebookで検索して、日常生活を観察したり、いろいろな質問をするという方法です。自分が気になること、たとえば「大学楽しいですか?」とか「○○の授業は分かりやすいですか?」とか、ざっくばらんに聞いてみましょう。学生は大学・専門学校とは利害関係がほとんどありませんので、人生の先輩としてきっと正直に話してくれると思います。

以上のように、使えるものは何でも使って、「教育力」と「雰囲気」を知るために大切なポイントを押さえていけば、きっと「いい大学/いい専門学校」を選べます。自信をもって、落ち着いて、あなたにとって必要な大学・専門学校を見極めてください。健闘を祈ります!


■活用してほしい情報


『中退白書2010』
この本には、いまの高等教育機関からの中退の実態が詳しく載っています。中退に関心がおありの方は、ぜひご一読いただきたいと思います。

中退経験者インタビュー
中退経験者101名へのインタビューの記録です。中退経験者の語りから、いまの学生の様子を知っていただけます。

『大学の実力』
読売新聞が実施している「大学の実力」調査では、中退率や就職率など、他の大学情報誌では知れない情報が詰まっています。また年々調査協力大学を増やし、2011年度版には623校が回答しています。大学選びや進路指導にお役立て下さい。

その他の皆様へのメッセージ

その他の皆様へのメッセージ

日本のために、大学・専門学校を変える。


■大学・短大・専門学校「中退」……8人に1人


いま、大学生・短大生・専門学校生のうち、8人に1人が中退します。人数でみれば、じつに年間11万人が中退していることになります。

中退後は、60%以上が非正規雇用になり、約10%は無職です。非正規雇用になると、生涯賃金は正規雇用(高卒)の4分の1、正規雇用(大卒)の5分の1になってしまいます。また無職にいたっては、収入はほぼゼロですから、両親に養ってもらうか、月額15万円前後の生活保護を受けて暮らしています。大卒・新卒でも就職が難しいこの時代に、大学中退(高卒・既卒)の肩書きで正社員として就職できることはほとんどありません。

日本中退予防研究所は、こうした中退からのフリーターやニートを予防するために存在する日本で唯一の高等教育機関の中退専門研究所です。2008年の創設から、日本中退予防研究所はこの中退の原因を究明すべく、中退経験者、大学・専門学校関係者、高校関係者らへの調査および研究活動を続けてきました。

その結果として、様々な要因のなかでもっとも影響が大きく、かつ対応可能なのは、大学・短大・専門学校の「教育力不足」であるという結論を導きました。そのため私たちは、大学・短大・専門学校へのセミナーやコンサルティング活動による各大学・専門学校の教育力向上を主軸に中退予防活動を現在行っており、その方針は今後も継続したいと考えています。

しかし実際の中退の背景には、世界・日本経済、社会情勢、家庭問題、人間関係の問題、本人個人の問題など、じつに多種多様な要因があり、それぞれが複雑に絡み合っています。そして残念ながら、大学・専門学校や我々研究所だけでは、これら若者に関わる要素のすべてに対してアプローチすることはできません。


■あなたに、「できること」


そこで、大学・短大・専門学校に関わりの少ないみなさんにも、ぜひご協力いただきたいことが3つあります。それは、(1)若者を育てる、(2)問題解決を教育機関だけに任せない、(3)寄付です。

(1)若者を育てる
いま年間で11万人の若者が「学生」から「中退者」になっています。卒業までにおよそ8人に1人は辞める確率です。このように中退した若者たちは世の中にたくさんいます。そしてその多くが中退という世間からのレッテルに悩み苦しんでいます。しかし、彼らもかつてはふつうの学生だったし、いまもふつうの若者です。そこでいま私たちが考えなければならない問題は、彼らをどう育てていくかです。本人をよく見もしないのにネガティブレッテルを貼られるのは、非常に重いことです。中退者といっても、中身はどこにでもいる「若い奴」なのです。ほかの若者と分け隔てなく、むしろ優先的に、社会の枠からこぼれ落ちてしまった若者を育てて下さい。やり方はひとそれぞれで結構です。社会が一丸となって、彼らを見捨てず、育てようという気概でいることが、いちばんの救いです。

(2)問題解決を教育機関だけに任せない
もし大学・専門学校中退を避けられたとしても、若者の問題は消えたわけではありません。未就職や早期辞職でも若者は社会の枠からこぼれ落ちます。こぼれ落ちた若者が自力で再起することは難しく、ほとんどの場合に、生きづらい一生を過ごします。まして日本を牽引するような人材にはなれません。それでも落ちた若者をほうっておいてよいのでしょうか。

若い人を育てるのは、教育機関がもっとも特化して適しています。しかし、大学や学校の外でも、職場やお店や地域行事など、若者と大人が接する機会はたくさんあると思います。そこでもし社会から転げ落ちてしまいそうな若者がいたら、その場に応じて、そっと手を差し伸べてあげてください。たとえば、もし企業の方なら、インターンシップとして学生を受け入れ、就業体験にご協力いただきたいと思います。若い人のことを、どうか教育機関だけに任せないでください。

(3)寄付
私たちは大学・専門学校を根本から変えるべく、調査・出版、講演会、セミナー、中退予防実行支援など、日頃さまざまな非営利活動を行っています。しかし、大学・専門学校業界全体に対して、私たちの力は極めて小さく、とくに財源不足が深刻です。より広く、より迅速な中退予防プロジェクト遂行のために、もし賛同していただけるのであれば、ぜひともカンパをお願いいたします。寄付の方法はページ下部をご確認下さい。


■情報提供


●若者支援にご協力いただける方へ
Canpan
NPOなど支援団体の一覧があります。若者支援をお手伝いいただくきっかけとして、関心を持てる団体を探してみるのもいいかもしれません。

●インターンシップ受け入れをご検討いただける方へ
ETIC.
インターンシップを推進しているNPOです。こちらは一例ですが、こうしたインターンシップのマッチングを支援している団体にコンタクトをとるとスムーズに受け入れが進むかと思います。

●寄付をしていただける方へ
私たちの活動にご賛同いただける方は、活動継続のためにカンパをしていただけますと幸いです。皆さまのお心をお待ちしています。

【寄付方法】
050-1071-8324(TEL/FAX)もしくは、labo@newvery.jp(メール)までご連絡いただき、1)お名前 2)ご連絡先をお教えください。その後、以下の口座まで振込をお願いいたします。(大変申し訳ございませんが、振込手数料はご負担ください)

【寄付先口座】
ジャパンネット銀行 すずめ支店 普通口座 6931848 トクヒ)ニューベリー

政府・政策関係者へのメッセージ

政府・政策関係者へのメッセージ

「大学の情報公開」の推進と「給付型奨学金」の拡充を


●ニート・フリーター対策より「ニート・フリーター予防」を


いま日本で「ニート・フリーター」と呼ばれる若者は (1)学校を卒業後、(2)学校から中退後、(3)企業から離職後、いずれかの道を通ってきています。そしてニート・フリーター対策としては生活保護や自立・就労支援があり、学校での就職支援や会社での教育制度や福利厚生制度などは(1)と(3)のニート・フリーター予防を担っています。しかしその一方で、学校中退、とくに「大学・専門学校からの中退の予防」には誰も対応できていません。
 
日本はいま、大変な財政危機にあります。税収は減り、国債が積み重なり、もはやこれ以上生活保護やニート支援など「セーフティネット」にお金を費やすことは不可能です。

しかし、現状として、ニートの入り口である「大学・専門学校中退」は年間11万人で、統計的にはそのうち6万6000人がその後一貫して「ニートかフリーター」になり、15年間で大学・専門学校中退によるニート・フリーターは100万人に及びます。この現象がどのような意味を持つかというと、政府収入の減少と支出の増大にほかなりません。

例えば、ニート状態の人は税金を納めることができませんし、ニート状態の人の数が増える分だけ生活保護費やニート対策費が膨らんでいきます。逆に、もし彼らがニート状態にならなかったとしたら、きっと勤勉な社会人として社会に出ていることでしょう。そして賃金を稼いだり、ライフサイクルに沿った消費をしたり、もちろん税金や社会保険料などを納めるようにもなります。それが結果的に「日本の中間層を厚くする」ことに繋がります。

こうした大学・専門学校中退にともなう社会全体の機会損失と負担増を考えると、大学・専門学校中退が社会問題性(深刻な社会課題の発端となっていること)をより深く理解することができます。

大学・専門学校からの中退は予防が可能です。これを可能にするのは「大学・専門学校による戦略的中退予防プロジェクト」です。

当研究所の調査では、大学・専門学校生の中退理由のツートップは「学習意欲喪失」と「人間関係」です。その具体的な発言をみると、「授業がつまらない」「勉強についていけない」という学業的問題と「なかなか深い仲の友人ができない」「学内に居場所がない」などの生活面での問題が挙げられます。そして、大学・専門学校に対して否定的な意識があるためか、「学費が高い」「卒業しても就職できないかもしれない」など経済的デメリットばかりが目立って見え、在学する意義も必要性も感じられない、つまり「中退したい」と考えるようになることが分かりました。

このように「日常的なストレスの積み重ね」による中退パターンが全体の8割で、当事者の多くは高校までは学業・生活どちらの面でも「ふつうの若者」でした。そしてさらに研究を進めるうちに、要因は様々考えられるものの、彼らの中退の多くは「大学・専門学校の教育力不足」と関係があることが分かってきました。

教育力が不足しているということは、教育内容・教育方法に不足があるということですが、逆に、大学・専門学校に「教育力」があれば――授業があと少しおもしろければ。せめて学習速度やサポート体制が適切なら。ひとつでも学内に居場所があれば。授業や課外活動で、少しでも成長が感じられて、就職への小さな自信が持てたら――学生は確実に中退しなくなります。このことは、実際に複数の大学・専門学校内で行われた中退率抑制事例によって証明されています。

経営構造改革によって教育力向上を図った静岡産業大学では取り組み開始から10年以内に中退率が4割減し、同じく様々な施策によって教育力向上を向上させた長岡大学では年間7%の中退率が1%に下がるという目覚ましい成果を上げました。アプローチを間違えない限り、「ふつうの若者」の大学・専門学校からの中退は予防可能なことです。「大学・専門学校による戦略的中退予防プロジェクト」は、やればできる・やらねばならない課題といえます。


●「大学の情報公開」の推進と「給付型奨学金」の拡充を


調査の結果、数多ある大学・専門学校中退の原因のなかでも最大の原因は学校側の「教育力不足」だということが分かってきました。つまり大学・専門学校が変わらなければ、中退問題の根本的解決にはなりません。

そこでいま国をあげて行うべきは、「大学による戦略的中退予防プロジェクト」推進のための「大学の中退予防支援への投資」です。さらに具体的に、政府政策関係者各位にご尽力いただきたいことは、以下の2点です。
 
(1)「大学の教育情報公開」の推進
中退予防には、各大学の内部を変え、授業などの教育内容・教育方法を変え、教育力を伸ばす必要があります。

しかしいまの大学は派手な広告や、目新しい取り組みに飛びついて、教育力に力を注ごうとしません。なぜなら教育力で正当に評価されていないからです。教育力を向上させても、世間や受験生の関心を引き付けることはできないと考えています。そこで、大学の教育力を正当に評価するためのシステム作りが急務であり、そのシステム作りのためには、まず大学の教育に関するデータの透明性が必要不可欠です。

2011年4月から、文部科学省によって「教育情報の公開」が全大学に義務づけられました。この義務化はきわめて重大かつ画期的な決定でした。しかし、公開を義務化された項目に追加していただきたいものがあります。それは「中退率」「中退者の傾向」「就職率(就職者数/(卒業者数-進学者数)」「(非正規・契約社員以外の)就職先」です。

中退率によって、教育力や学生に対する態度(一人ひとりの学生が抱える問題に対処する大学側の問題解決能力)がおおよそ見当がつきます。また就職率と就職先からは、学生がどれだけ成長する大学なのかが分かります。これらの情報を組み合わせれば、大学の教育力の実態がおのずと浮き彫りにすることができ、大学が正当に評価されるための客観的な指標のひとつとなり得ます。これらを学部・学科・コース・男女・入試形態別にして、誰でもアクセスできるようにしていただきたいのです。

(2)「給付型奨学金」の拡大
中退のうち経済的困窮によるものはそう多くはありませんが、それでも本当に学費を工面できずに中退に至る学生は一定数存在します。彼らの多くは「返済できる自信がない」という理由から、貸与型の奨学金をうけることもせず、進学自体をあきらめています。

教育機会の平等は、古くから日本の教育方針の大きな柱でした。しかしいま、高等教育において、その基本方針は守られているでしょうか。どんな環境に生まれても等しく機会が与えられる社会ために、給付型の奨学金を拡大していただきたいと思います。

中退を未然に防ぐことができれば、若者がニートやフリーターになることを防げます。またニートやフリーターに仕方なくなる若者が減れば、日本の中間層が厚くなります。さらに、向上させた大学・専門学校の「教育力」によって、大学・専門学校は学生たちを「真に未来を担う若者」へと成長させることができます。フリーターでもニートでもなく、「日本を背負って立つ人間」を育てる――この実現の足掛かりが「中退予防」です。まさに未来への投資であり、国政の最重要課題だと言っても過言ではありません。


■情報提供


『中退予防戦略』
2011年現在、すでに中退予防を実行してきた大学があります。手探りながら、着実に成果をあげ、中退予防ノウハウに磨きをかけています。そんな大学の中退予防事例を紹介しているのが拙著『中退予防戦略』です。全国的に中退予防が行われるための布石にしていただければ幸いです。

そのほか、中退の実態を調査した『中退白書2010』のほか、FD/SD講師派遣、中退と若者に関する講演会、中退予防支援など、私たちにできることならお手伝いさせていただきます。リンクをご参考に labo@newvery.jp までご連絡ください。

報道関係の皆様へのメッセージ

報道関係の皆様へのメッセージ

脱偏差値!「教育力」による大学評価を


●報道で変える、大学の常識――「真の姿」をすべての人に


大学入試、入学定員割れ、学部再編、就職難――
これらがテレビや紙面でよく見られる大学関係の情報です。しかし、こうした表層的なことをどれだけ追いかけても、大学の実態は見えてきません。それどころか一部の報道に至っては、もはや「広告」と大差がなく、大学の「虚像」を世に売り込んでいると言っても過言ではないでしょう。

メディアが伝えるべき大学の「実像」とは何でしょうか?それは、大学として本来の使命を果たしているかどうか、つまり、高い「教育力」を実際に行使しているかどうかということです。

現代の日本では、ほとんどの大学生が「成長しないまま」社会に出ていきます。高校までは、知識や技術の習得を通じてきめ細かい教育が為されてきました。実際、PISAのランキングで日本は世界のベスト10に位置づけられます。しかし大学になると、少なくない大学が「教育機関」とは名ばかりで、流行りのコンテンツに飛びついて集客性を上げる「サービス業」になってしまっています。(そのような大学に対しては「サービス業にさえなっていない」という厳しい評価をする人もいます。)実際、日本の大学への評価は、OECD加盟国の中で最も低いカテゴリーに属しています。

大学の本来の使命は「学問・文化の継承」すなわち「教育」です。もちろん、かつて極少数のエリートしか大学に進学できなかった時代には、大学の使命は「研究」と「研究を通じた教育」だったわけですが、2011年現在、18歳人口の半数近くが大学進学するようになり、大学の使命は「研究」から「教育」へと変わりつつあります。先端的な研究が求められるのは、1100校を超える大学・短大のうち、多くて200校程度ではないでしょうか。

それでは、「教育」の受益者たる学生にとって、「教育力」とは何でしょうか。名物先生がいること?学食が充実していること?都心に近いこと?いいえ、そんなことではありません。学生にとって「教育力」とは、入学から卒業までの「成長の幅、成長度」を最大化するものです。そして全入時代に突入した今、「成長の幅の大きさ」=「教育力」こそが大学間競争における最大の差別化要因といえます。

ところで、一体なぜ「教育力の低い大学」でもこれまで生き残ってこられたのでしょうか――そのもっとも大きな要因は、以下の2点です。

(1)大学関係者たちが「教育に力を入れても受験生は集まらない」と思っていること
(2)受験生が正しい大学選びをできていないこと


まず、多くの大学が、いくら教育力を高めたとしても、世間から評価されず、受験生の支持を集めることもできないと考え、派手な広告をしたり、目新しい学部を新設したりすることに奔走しています。「定員割れ」にならないように、必死に高い経費を割いているのです。

また、受験生の側も、何を指標に大学選びをすればいいのかを知らずにきました。「友達が行くから」とか「CMを見て知っていたから」などという安易な理由で進学を決めることもあります。もちろん高校には進路指導の先生がいますが、残念ながら、先生方のなかでも「本当にいい大学」の見極め方を知らない先生がほとんどです。

そして、もし大学の教育力を見比べて進学先を決めたいと思えたとしても、大学選びに欠かせない情報を入手できないという実情があり、受験生にとっては適切な大学選びをしづらい環境が培われてきたと言えるでしょう。

こうして大学側と受験生側の双方から相乗効果的に創り上げられたのが「教育力は物足りないが、広報は上手い大学」の繁栄です。しかし、この矛盾が維持されることの背景には、マスコミの皆さんの影響もあるのではないでしょうか。

一般的に、マーケットのルールは、以下の2つの条件で決定されます。

(1)消費者の見識の高さ
(2)目の肥えた消費者に対する情報提供


これを大学市場に置きかえると、

(1)受験生の大学選びの目
(2)大学選びに必要な情報提供


となり、この2つの条件の不備が「教育力不足」の大学の存在を許していることになります。

つまり、大学の教育の質を左右するのは、受験生の大学選びとその情報源がいかに整っているか、ということになります。本来ジャーナリズムの意義は、表層的な事実を伝えることではなく、事実の裏にある真実を掘り出し、明るみに出すことにあるはずです。

しかし、いままで大学の教育が正当に評価されてこなかったことを見ると、大学に関する報道が「十分ではなかった」もしくは「間違っていた」と考えられます。

もちろん受験生のほとんどは高校生ですから、高校の先生方にも指導責任があります。しかし、一般的な常識をつくりだすのは学校の教員ではなく、大衆に訴えるマスコミの仕事であるはずです。そして一般に「大学の教育力」が注目を浴びず、「見た目ばかりが良い大学」が選ばれるということは、マスコミが大衆相手に伝えた情報に問題があったという可能性が考えられます。

真摯な報道をされている方には、大変申し訳のない主張だと思います。しかし、良い悪いに関わらず、マスコミの皆さんがお伝えになる内容は、大学選びにおいても、その先の学生たちの人生に対しても、大変大きな影響を持つものだということを改めてご理解いただければ幸いです。


●脱偏差値!「教育力」による学校選びを


もし大学の正当な評価に協力しようと思っていただけるのであれば、マスコミの方だからこそ担っていただきたい役割があります。それは、「大学の正当な評価」をするための「基盤づくり」です。『脱偏差値!教育力による学校選びを』をスローガンに、偏差値によるランキングをやめ、教育力による大学ランキングを作っていただきたいと考えています。

これまで再三問題にされながらも、「偏差値」による学校選びは延々と続いてきました。受験生は中身を比べずに、少しでも偏差値が高い大学へ進学しようとします。しかし、現実を見ると、これは不本意入学・負け犬根性・劣等感をつくるだけの悪しき慣習になってはいないでしょうか。受験生みんなができるだけ偏差値の高い大学への進学を希望すれば、当然第一志望に不合格になる受験生が続出、結果的にかなりの学生が「不本意入学」になってしまいます。さらに受験での勝ち負けを「人生の勝ち負け」にすり替えてしまい、入学当初から学生たちがいわゆる「負け犬根性」や「劣等感」を持つことにもなります。

しかも受験時は偏差値ばかり気にして肝心の教育力にはほとんど気を配りませんから、彼らの学生生活が何色になるかは予想もできません。また、たとえ偏差値の高い大学にいけたとしても、必ずしも満足のいく教育を受けられるとは限りません。例えば、マンモス大学では誰もがゼミに入れるわけではありません。このような状況では、学業や人間関係に苦しむひとが出るのも当然です。偏差値による学校選びは、大学を不当に序列づけ、「世間体」という圧力を介して学生からさまざまな自由を奪う原因となっています。

偏差値に代わる評価軸で「正しい大学選び」をするための「基盤づくり」ですべきことは、具体的に二つあります。

はじめに、大学のオーディエンスである高校生や高校の進路指導の先生たちに対して、入試難易度ではなく、「大学の実力」の測り方を伝えます。そのもっとも適切な評価軸として「教育力」を提案し、なぜ教育力で大学を選ぶと有益なのかを理解してもらうことが肝心です。

そして次に、大学の「教育力」の評価に必要なデータを提供します。とくに重要なのは「中退率」「中退者の傾向」と「就職率(卒業生を母数に)」、そして派遣・契約社員を除いた前年度の「就職先一覧」です。これら四つの数値を学部・学科・コース別・男女別・入試形態別で提供することによって、各教育課程の「成果(アウトカム)」が比較できます。さらに、「教員対学生比」と「定員充足率」があれば、簡単ではありますが教育現場の状況が伺い知れます。

これらのデータは現在一部公開義務が課されていますが、一括で公開している場はなく、また大学によって公開方法はバラバラで、一人ひとりが欲しい情報にアクセスするのが困難な状況です。このことが改善され、全てのデータに誰でも簡単にアクセスできるように「データベース化」されれば、受験生や高校の先生たちの「大学の評価」に大きなインパクトをもたらすことは間違いありません。

「偏差値」による学校選びは、もう止めなくてはなりません。これからは「教育力」をものさしに、一人ひとりが自分に合った大学選びをしていく時代です。しかし、そのために私たち日本中退予防研究所がリーチできる範囲は、あまりに小さすぎます。「大学評価の軸を変える」という大仕事は、世間一般に強力な影響力をもつマスコミの皆さんにしかできません。また、だからこそ、この仕事は皆さんがやらねばならないことだと思います。学生たちと日本の希望ある未来のために、ともに大学業界に変革の風を吹かせましょう。その風は、教育改革に取り組む方々への「追い風」にもなることでしょう。


■活用してほしい情報


中退経験者インタビューレポート
中退白書2010
過去のメディア掲載

取材のお申し込みは、下記の連絡先までお気軽にお問い合わせください。
 Tel/Fax 050-1071-8324
 Mail   labo@newvery.jp
 担当   佐藤

大学・短大・専門学校関係者へのメッセージ

大学・短大・専門学校関係者へのメッセージ

教育改革による「中退者ゼロ・プロジェクト」を


■中退というリスク――「大学存亡」の危機を救え


いま、およそ8人に1人の学生が、大学・専門学校を中退しています。総数にすれば、年間11万人の若者が「中退者」になります。

中退が本人に及ぼす影響は様々ですが、なかでもとくに深刻なのが中退後の「就職状況」と賃金です。労働政策研究・研修機構によれば、最終学歴が「高等教育機関中退」の人のうち、男性45.9%、女性58.5%が初職から一貫して非正規雇用または無職であるといいます。大卒でも就職氷河期だとの報道が連日なされていますが、「大卒・新卒」という特権がある場合と「中退して高卒・既卒」の場合では、その差は歴然です。

さらに、中退は中退者本人だけではなく、大学・専門学校にも2つのダメージを与えます。ひとつは「機会損失」です。学生ひとりがやめると、その学生が納めるはずだった学納金を逸失します。この機会損失は、中退率があがるほど大学・学校の財務を圧迫して、深刻な経営課題となることをあらわします。とくに中小規模大学の場合、中退率上昇による経営悪化は大規模校より速く進行すると考えられます。

しかし、もう一つのダメージである「ブランドイメージの悪化」のほうがもっと厄介です。中退した学生たちの多くは、その後の人生がうまくいかず、自分がいた大学・専門学校のことをよく思うことはできません。そのため、就職難や友人が減ったこと、家族に負い目を感じることなどの「諸悪の根源」を、すべて大学・専門学校を中退したことにしてしまいがちです。

それがどういうことかと言えば、たとえば毎年250人が中退する大学・専門学校では、単純に考えて、10年後には2500人の地域住民があなたの大学・専門学校に対してネガティブな感情を持っているということです。家族を含めると、1万人にも達するでしょう。すると地域内のさまざまなところで、あなたの大学・専門学校に関する悪い話が流れはじめます。悪評は流れ流れて、受験生の親や高校の先生や受験生たちの間でも広がります。直接的に塾や高校の先生が保護者という場合もあります。

「あの大学・専門学校はよくないらしい」という評判が定着した大学・専門学校に、誰も行きたい(行かせたい)とは思いません。そして地元に愛されない大学・専門学校が地元以外から愛される訳もなく、結果として、「中退」は着実に入学志願者数を減少させていきます。最終的にはその大学・専門学校は存亡の危機に立ちます。実際に、今まさにそのようなことが原因で、受験者数が減少し、定員に満たなくなっている大学・専門学校が経営難に陥っています。

つまり、「大学・専門学校中退」は、大学・学校にとっての重大な経営問題でもあるのです。経営課題として中退のリスクを認識することは、とても大切です。しかし一方で、大学・専門学校の関係者のみなさんには、「教育的観点」からも、「中退者の存在」を重く受け止めていただきたいと思います。

大学も専門学校も教育機関である以上は、「人を育てる場所」のはずです。そして人を育てるということは、その人の人生を幸福にすることです。それにもかかわらず、若い学生たちを中退させてしまい、学生に苦難の道を歩ませてしまうというのは、その存在意義に反することではないでしょうか。組織維持することができたとしても、教育機関として、学生を成長させるという使命を果たせないのであれば、その存在価値は大いに疑う余地があると思います。

中退の細かな原因は、個々のケースによって非常に多岐にわたり、数えればきりがありません。しかし、私たち日本中退予防研究所では、中退者へのインタビュー調査から、今日における中退のもっとも大きな原因は大学・専門学校の「教育力不足」にあると考えます。

世間では「やる気を感じられない」「学力が落ちた」などと学生を非難する声が聞こえますが、それでは問題の捉え方を根本的に間違えていることになります。中退は、決して学生だけのせいではありません。個々の教員が、学生たちに学問の魅力や意義を伝えきれなかったこと、よき師となれなかったこと、そして大学・専門学校全体として十分に良質な教育を提供できなかったことの結果が中退なのです。

もちろん、学生個人を取り巻く環境を振り返れば、まず家庭があり、小・中学校や高校の先生方もいて、大学・専門学校入学以前に、そういう方々の指導に不備があったという可能性は十分に考えられます。しかし、学生本人はもうそれらを卒業して、大学生や専門学校生になってしまっているのです。いま目の前にいる彼らは、もう引き返すことはできません。つまり、彼らにとって社会に出る前の「最後の砦」が、大学や専門学校なのです。いまや企業は人をイチから育てていく余力を失っていると言われますから、日本の若者を一人前の大人に育てられるのは、大学・専門学校だけと言っても過言ではありません。


■「中退者ゼロ・プロジェクト」による教育の抜本的改革を


そこで、大学・専門学校の方々に取り組んでいただきたいことがあります。それは「中退者ゼロ・プロジェクト」です。

確信して申し上げられるのは、中退は「予防できるもの」だということです。先に述べたとおり、教育力が原因で中退するのであれば、逆にまた「教育力によって中退を予防する」ことができます。実際に、予算が少ない大学でも、組織改革を実行し、教員の指導力向上の施策を徹底し、大学全体の教育力を向上させた結果、みごとに5~10年間で中退者半減またはそれ以上の減少が実現しています。

たとえば長岡大学では、当初6.9%だった中退率が1.4%になるという驚愕の成果を生みだしています。なぜそんなことが可能だったかと言うと、まず必要とあらば荒療治もやってのけるだけの「本気」の心構えがあったからです。長岡大学の改革の主軸は「教育改革」でした。そのために、はじめに導入したのが「マンツーマン指導」でした。この制度下では、全教員が1年生から4年生まで10数名ずつ「担任」として、学業面はもちろん、生活面や就職活動に関しても毎月面談を行い、その度に指導をします。もちろん、それまでは極めて高い中退率でしたから、多くの教員は学生との密なコミュニケーションをはかってきませんでした。そのため導入時には、面談や指導がうまくいかない教員や、責任を放棄する教員も続出しましたが、そこは改革チームのメンバーが熱心にコミュニケーションをとっていきました。また、「研究」ではなく「教育」という使命に共感する教員を新たに採用していきました。その他にも様々な策を「本気で」実行していった結果、中退率1%台を実現させられたのでした。

すべての「言い訳」を退け、ゼロベースで「学生たちのために本当にしなければならないこと」だけを考えて、実行する――これが教育改革・中退予防の唯一にして最善の方法です。学生にとって、大学・専門学校に通ういちばんのメリットは「自己の成長」です。そのため、成長できる場所であれば学生は熱心に通います。

そして中退予防に際しては、大学・専門学校の「偏差値」や「知名度」は全く関係ありません。目の前にいる学生たちの中退を止められるのは、いま間近で最も影響を及ぼしている大学・専門学校の教職員だけです。理事会と教員と職員が一丸となって「中退したいと思われない学校」を目指すという「勢い」が、学生にも必ず「感染」していきます。これが教育現場の人間にしかできないもっとも本質的で効果的な中退予防策です。

また、教育力の高さは大学・専門学校の「強み」になり、教育力向上によって、就職率が上昇、就職先の質も向上し、入学志願者は自然と増えていくでしょう。近く迎える「人口減少社会」という「確かな未来」も含めて考えると、現状のまま広報活動や目新しい学部増設などによってその場しのぎで入学者を集めるよりも、中退者を減らしながら入学者を増やしたほうが、持続可能な大学・専門学校になれることは間違いありません。「中退ゼロ・プロジェクト」は、どれだけ得があっても、損はありません。

日本中退予防研究所は、これまでに関東・関西の複数の大学・専門学校において中退率抑制計画の立案および実行支援を行っております。プロジェクト実現のためであれば、助力を惜しみません。ぜひお気軽にご相談ください。


■情報提供


大学・専門学校内での中退予防の理論と実例は『中退予防戦略』に詳しく紹介されています。そのほか情報提供から実行支援まで、私たちにできることであれば全力でお手伝いさせていただきます。お気軽にご相談ください。
●中退率抑制コンサルティング
●FD/SD講師派遣
●『中退予防戦略』
●『中退白書2010』

中退を考えている学生のご両親へのメッセージ

中退を考えている学生のご両親へのメッセージ

「中退したい」――それは「助けて」のサインかも


息子さんや娘さんが大学・学校を休みがちになったり、突然中退したいと言ってきたりしたら、みなさんは何を思われるでしょうか。どうしてこんなことになったのか、何を考えているのか、この先一体どうするつもりなのか。きっとさまざまな不安が沸きあがってくると思います。そして不安の解消のために、早く結論を出したいという気持ちになると思います。

じつは、多くの親御さんが同じように不安な気持ちを抱えています。そして、お子さんがどんな状況から中退に至ったのかを知らないために、どうアドバイスしていいか、どう協力していいのか分からなかったというケースが非常に多いことが私たちの調査によって明らかになりました。そこで、ここではまず、お子さんが中退したいと考えるようになった理由や背景を、考えていただきたいと思います。

私たち日本中退予防研究所が行った調査では、中退する理由は大きく2つ、「学習意欲の喪失」と「人間関係」がありました。

学習意欲がなくなる背景としては、学力不足など、さまざまなものが考えられます。しかし、その根本的な問題は、授業がつまらないこと、教え方が上手ではないこと、つまり大学・専門学校の「教育力不足」にあります。

また「人間関係」では、派手なトラブルがあるわけではなく、そもそも友達ができないことが問題になっています。とくに大学ではホームルームのような自動的に親密になれる空間がないため、人見知りをしていると、友達ができないことがよくあります。周囲にグループができるなかで孤立することは、想像以上に淋しく、孤独感と劣等感にさいなまれてしまいます。

このように「授業中も苦痛」「休み時間も苦痛」となれば、通学すること自体がかなりのストレスです。しかし授業がつまらないことや友達ができないことを、本人は恥ずかしく感じて誰にも言えません。そして時間の経過とともにこの苦しい状況から解放されたい=中退したいと考えるようになるのです。その考えが確信になったときはじめて「つまらない」「通う意味がない」「合わなかった」と断片的に口にしはじめます。

これらの「中退の実態」をより多くの方々に知っていただきたくて、私たちは、実際に大学や専門学校を中退した人たちの経験談を、「中退経験者インタビューレポート」で公開しています。中退の前、中退するとき、中退し後の状況などが語られています。もちろんお子さんと同じ状況の方がいるとは限りませんが、少しでもご参考にしていただければ幸いです。

ところで、中退者たちが在学中に「中退することを相談した相手」は、誰だったと思いますか?じつは、それは「親(両親)」でした。じつに6割の中退者が親に相談したと言っています。これは相談相手としてはトップの数字です。

しかし、一方で、親に相談した中退者の半数以上が「反対されなかった」と答えているのも事実です。これは親が無関心だったわけではなく、子どもの事情が分からないし、子どもとの関係が崩れることを恐れて強く言えなかったことのあらわれだと私たちは考えています。しかし、中退者からは「当時は喧嘩になってしまったが、反対してもらってよかった」「何年かかってもいいからと言われれば辞めなかった」という言葉も聞こえます。また中退後に後悔したこととして、「親に迷惑をかけたこと」を挙げるひとも多くいました。子どもにとって実際に影響力が強いのは、やはり「親」だということです。


■「親」だから、できること


そこで、保護者の皆さんにしていただきたいことが二つあります。第一に、「力になりたい」と伝えていただきたいと思います。親ならだれでも子どものためなら何でもできると思っているでしょう。しかし、子どもは案外それを知りません。親がいても、自分はひとりぼっちだと思い悩むこともあります。とくに中退したいと思うときは心が不安でいっぱいのときですから、力になりたいんだという意思を、分かりやすく言葉で伝えることが重要です。もちろん、最終的にどうするかを決めるのも、その責任をとるのも、親ではなく子ども自身です。しかし、だからこそ何が起きても私には味方がいるという事実が、大きな心の支えとなり、次の行動につながる勇気を与えます。

第二に、子どもに中退したい理由をじっくり聞くことが大切です。いざ子どもを前にすると、摩擦が生じることが怖くて、中退の理由を詳しく聞き出すことはできません。でもあなたと同じように、いえむしろそれ以上に、本人は言い出しづらいし本当の悩みを言うのが怖いものです。しかし本当は本気で話を聞いてくれて、どこまでも自分の味方でいてくれる、そんな誰かに話を聞いてほしいと願っているはずです。それができる唯一の存在が「親」です。親として、まずは子どもの悩みをじっと聞いてみてください。決して反論したり、結論を急いだりせず、大変だったね、とまるごと悩みを受け止めるところから始めましょう。

また、もう一歩踏み込めるときには、ぜひお子さんに「中退を考えている学生へ」を読むよう勧めてみてください。中退後のリスクなど、中退をする前に知るべきことや考えるべきことが掲載されていますので、きっとお子さんの抱える問題解決にお役立ていただけると思います。


■活用してほしい情報


●休みがち~「中退したい」と言い出したとき
中退経験者インタビューレポート
中退経験者101名の生の声がレポートとしてまとめられています。お子さんの抱える苦悩のヒントが見つかるかもしれません。
「中退白書2010」
中退経験者の生の声と、中退に関わる社会的なリスクなどをまとめてあります。
学生向けメッセージ「中退を考えている学生へ」
NPO法人ETIC.
休学やインターンシップの支援を行なっている団体で、学生生活を充実させるためのヒントが見つかるかもしれません。

●中退直前~中退してしまったとき
中退経験者インタビューレポート
若者サポートステーション
主に職業に就くことへの不安や心配などについて、各地域で個別相談事業を行なっています。

中退を考えている学生へのメッセージ

中退を考えている学生へのメッセージ

人生と中退について知っておいてほしいこと


■中退のリスク――あなたの人生に及ぼす影響は?


周囲に馴染めない、授業についていけない、楽しみが無い、通学が憂鬱――

「学生」として過ごすなかで、みなさんも一度や二度はこうした感情を覚えたことがあるのではないでしょうか?じつは、これらの言葉は、大学や専門学校を中退した人たちが「体験談インタビュー」のなかで発言したものでした。彼らは、漠然とした「苦しみ」から解放されたい一心で、中退を選んでいきました。

しかしながら、多くの場合では、この判断は間違っていると言わざるをえません。中退したとしても、気持ちはきっと晴れないでしょう。むしろ、中退をすれば、生涯つきまとうさらに大きな悩みを背負うことになってしまいます。

小学校から高校、大学・専門学校までは、私たちには自分の席が用意されていました。「生徒」や「学生」という肩書があり、みんなと同じ「やるべきこと」や「行くべき場所」がありました。しかし、大学・専門学校の外には、自分の席は用意されていません。自分の席は自分で用意しないといけないのです。正直に言って、「用意された自由」はそこにはありません。

もちろん、皆さんご存じのとおり、中退しても「成功」した実業家はたくさんいます。しかし彼らは、努力をしたから成功したのであって、中退したから成功したのではないということは明らかです。

起業家のようなすごい人でなくても、中退の悪影響を比較的受けない人たちもいます。ただし、そうしてリスクを回避できるパターンは、じつは次の3通りしかありません。

(1)大学・専門学校などに再入学する
新しい大学や専門学校に再入学すれば、2~3年は卒業年次がずれるものの、その後のキャリアにはそれほど支障はありません。ただし、再入学となれば、再受験のための予備校代・受験料・入学金・2~4年間の授業料など少なく見積もっても300万円は必要になります。そのため、経済的に余裕のある家庭でなければこの手段は現実的ではないのが難点です。

(2)身内の縁で就職する
「コネ」でも何でも、就職してしまえば学歴はそんなに大きな問題ではなくなるかもしれません。あれば積極的に活用してしまいましょう。ただし、親戚か近い間柄の人の会社に就職しようにも、そうした人が周囲にいてくれなければ不可能ですから、これもまた「特別な家庭」の人だけがとれる方法です。

(3)結婚する
結婚や出産がきっかけの場合には、中退を後悔する人はあまり多くありません。それは、中退後の生活が家庭や子育てで充実しているためだと思われます。ただし、これは、基本的に女性に限られたことですので注意が必要です。

自営業、再入学、身内のコネによる就職、結婚・出産――これ以外の「中退」は、はっきり言うと、あなたの人生を大きく悪い方向へ変えてしまう可能性があります。中退後の就職状況を調べると、大学新卒の90%以上が「正社員」で就職しているのに対して、中退者が「正社員」になったのは約15%だけで、逆に約60%が「パート・アルバイト」や「派遣・契約社員」、約17%は「無職」であることが分かっています。

初任給をみると、正社員でもだいたい15万円~20万円程度で、アルバイトでの収入と大差なく見えます。しかし、正社員の給料には昇給やボーナスがあるので、年収や生涯賃金で見るとアルバイトの数倍にもなります。また、もしも病気で働けないとき、正社員なら会社が休んでいる期間の給与を補償してくれますが、非正規のアルバイトでは、当然収入はゼロになってしまいます。

それでも、若いうちは、アルバイトで月20万円も稼いでいれば十分暮らしていけるでしょう。しかし、考えてもみてください。10年後、みなさんが30代になっても、同じ生活を続けていると言えるでしょうか?そこからさらに20年後、ご両親と同じ50代になったとき、そのアルバイトを続けていられるでしょうか?

答えは、あなたにお任せします。人生は、あなたのものです。何をするのも、どう生きるかも、あなた次第です。しかし、その分責任もリスクも負うのはあなたであるということを忘れないでください。


■「とりあえず中退」に逃げない!


もしいま悩みを抱え、中退したいと思っているのなら、まずは「中退したあと」のことを考えてみてください。5年後10年後20年後に、中退した自分がどうなるか、人生について真剣に考える時間を作ってください。人によっては1日で終わるかもしれませんし、2~3週間かかる人もいるかもしれません。

そして、よくよく考えた末に、「中退しないほうが得だ」と思えたら、ぜひ別の選択肢を選んでほしいと思います。中退は、そんなに軽いものではありません。中退以外の解決策は必ずあります。ここでは、ご参考までに、具体的な3つの方法をご紹介します。

(1)休学
休学して、その1年間をほんとうに自分の好きにつかえばいいと思います。自分で選んだことをとことんやる、という経験から学べることはたくさんありますし、1年くらい卒業がのびても就活には支障ありません。就活についてもう少し言えば、中退して大卒・新卒でなくなるより、よほど正社員になりやすいといえます。

(2)留年
単位不足で留年が確定し、留年は恥ずかしいからという理由で中退をするひとがいます。たしかに同い年の友人がいない1年間はつらいかもしれません。しかし中退すれば、それこそ大学・専門学校の友人とはもう会えなくなります。友人たちが学生の間は学生ならではの話題についていけず、社会人になるときには、学歴のちがいに劣等感を覚えてしまい、関係を断ち切ってしまうひとが多くいます。留年して卒業までに5年や6年がかかっても、大卒は大卒です。

(3)奨学金
家庭の経済状況が苦しくても、奨学金で通うことができます。現在、公共団体が支給している奨学金のほとんどはローン型ですが、たとえば合計200万円借りたとしても、卒業後20年をかけて返済するのですから、返済金は1カ月に1万円ほどです。これは十分に返済可能な金額ではないでしょうか。せっかく受験料も入学金も払ってきたのに、わざわざそれを捨てるようなことをする必要はありません。

日常のなかで生まれた悩みは、大学や学校に通うだけでは消えません。しかし、だからと言って、中退してもその悩みが本当の意味で消えることはありません。目的のある計画的な中退まで止めるつもりはありませんが、「とりあえず中退」というのは、絶対にやめてほしいのです。あなたの人生を、現実的に考えてください。

もし1人で考えるのが辛かったら、ご両親などの「信頼できる年上の人」に相談してみるといいと思います。「中退について話をするのは怖い」とか「あまり心配させたくない」と思うかもしれませんが、親身に話をきいてもらえば、少し冷静になれるでしょうし、きっと必要なアドバイスをしてくれるはずです。近くに信頼できる人がいなければ、逆に全く利害関係のない「他人」に相談するのもいいかもしれません。「若者サポートステーション」では、そうした悩み相談のプロがいますから、よければ利用してみてください。


■活用してほしい情報


●ギャップイヤー.jp
休学体験談を読むことができます。「休学」の幅の広さを伺えます。
●ETIC.
休学やインターンシップの支援はもちろん、あなたの将来についても親身にアドバイスをくれるので、ぜひ気軽に相談してみてください。
●若者サポートステーション
主に職業に就くことへの不安や心配などについて、各地域で個別相談事業を行なっています。

みなさまへのメッセージ

各関係者へのメッセージをまとめました。
若者たちの社会的弱者への転落を未然に防ぐために、ご協力いただければ幸いです。